クリスマスイブに、まちでピアノを弾く人々

「ストリートピアノ」や「駅ピアノ」など、まちなかにあって自由に弾くことができるピアノが増えています。そこで演奏される様子がYouTubeにアップされたりテレビ番組として取り上げられたりと、すっかりおなじみの景色になった感もあります。福岡のまちなかのピアノは、いったいどんな人達が弾いているのだろう?と興味を惹かれ、クリスマス・イブに取材に出かけました。

まちなかでクリスマスコンサート!

最初にうかがったのは、博多区千代にあるパピヨン24の1階。ここには西部ガス都市開発株式会社が創立50周年を迎えたことを記念して、「Chiyo Connect Piano」と名付けられたピアノが設置されています。ふだんは入居テナントなどの関係で昼12時から1時間の自動演奏をしているそうですが、この日は一般の応募者を募って「Chiyo Connect Pianoクリスマスコンサート」が行われていました。
会場は、知り合いや通りかかって足を止めた人で満員に。(メイン画像)

今回コンサートに参加した方にお話をうかがいました。

ジャズ風のアレンジを施した「White Christmas」をグルーヴィーに演奏した宇根岡和香さん。

_今日の演奏はいかがでしたか?
「楽しかったです。少し緊張しましたが、人前で弾くのは恥ずかしくありません」

_ふだんはどのようにピアノを弾いていますか?
「毎日、学校から帰って宿題をした後に練習するのを習慣にしています。速い曲を弾くのが好きです」

竹内まりやの「いのちの歌」を、会場を包み込むようなオカリナとピアノで演奏した須川哲治さんと草場日子さん。

_オカリナはいつから演奏されているのですか?
須川「5年ほど前から。これまでは篠笛を演奏してきました」

_音楽はどのような存在ですか?
草場「なければ困る生活必需品のようなものではありませんが、あることでちょっと生活が豊かになるものです。長く取り組んでいますが、音楽の正体はなかなか分かりません」

_ふだん街のピアノを弾くことはありますか?
草場「この演奏に備えて、人前で演奏する感覚に慣れておこうと、古賀サービスエリアで練習してきました」
須川「アンコールももらえて、うれしかったよね」

山下達郎「クリスマスイブ」を、切なく華やかに演奏した藤澤優子さん。

_ふだんは音楽とどのようにつきあっていらっしゃるのですか?
「3歳からピアノを始めました。ずっと好きで続けてきて、ライブスタジオでの月に1度の弾き語りを10年以上続けてきました。老人ホームへの慰問なども行っていて、ポップな曲から映画音楽まで、いろいろ弾いています。リクエストをいただくことも多いので(笑)」

_音楽はどんな存在ですか?
「ある演奏家の方が『音楽をやっていて悪いことは1つもない』とおっしゃっていましたが、私もそう思います。私にとっては人の輪や心の輪の要にあるものです」

西部ガス都市開発株式会社の松田和久常務は、「まちや地域で音楽をつむぐ存在になればとの思いで、Chiyo Connect Pianoと名付けました。2021年10月1日に設置したばかりで、活用していくのはこれからです。今回のコンサートにも社員自ら演奏にも参加していますが、このピアノができたことで、同僚たちの人柄に触れる体験をしています。これからはもっと地域のみなさんとともに弾くことで、人々をつなぐ役割を果たせればいいですね。長く愛されるピアノに育てていきたいです」と話します。

今回のコンサートを企画した伊集院知子さんによれば、「技術の上手い下手に関係なく、音楽が好きでみんなの前で演奏してみたいという人たちと時間を共有したい」とのこと。楽器は限られますが、弦楽器やオカリナなどと一緒に演奏できるのも魅力なので、今後の公募の予定はぜひホームページをチェックしてみてください。

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みんなに聞いてもらえるとうれしい!

さて続いて場所を変え、天神のど真ん中ソラリアプラザへ。福岡市初のストリートピアノとして、2021年10月20日に設置したもので、こちらはだれでも弾くことができます。天井が高い空間で響くピアノの音に、買い物途中の人たちが思わず足を止めて聞き入り、演奏が終わると自然と拍手が起きることも。聴いている人の中にはスマホで動画を撮ったり、演奏者に話しかけたりと、様々な交流も生まれていました。

こちらで演奏していた人たちにも話を聞きました。

「千本桜」からback numberの「クリスマスソング」、「ナイト・オブ・ナイツ」を弾いていたおむすびさん。

_ピアノ歴はどのくらいですか?
「3歳から弾いていて、いま大学1年生です。ピアノはずっと続けてきました」

_今日の選曲は?
「千本桜は得意な曲です。あとは今日に合わせてクリスマスらしい曲と、最後に盛り上がりのある曲を持ってきました」

_今日はどうしてここで弾こうと思ったのですか?
「都庁のストリートピアノのことを知っていて、天神にできたとニュースで見て来ました。これまでにも太宰府駅や筑前前原駅で弾いたことがあります」

_ストリートピアノの魅力は?
「結構観客の方はシビアなので、いい演奏ができたときは反応がダイレクトに返ってきます。集まっている人の年齢層や雰囲気で曲を選んだりもします。拍手をもらえると、やっぱりうれしいです」

ベートーベンのピアノソナタ第8番第2楽章「悲愴」を演奏していた、年川裕人さん。

_なぜストリートピアノを弾き始めたのですか?
「旅行に行ったときに、都庁の草間彌生デザインのピアノを弾いたのですが、そのときあまりうまく弾けなかったのが悔しくて、それ以来ピアノに熱が入るようになりました。これまでに渋谷のキットカットショコラトリーに設置されている鍵盤がキットカットになったピアノや、横浜の関内駅や馬車道駅など、いろいろな場所で弾いてきました」

_ストリートピアノの魅力はなんですか?
「知らない人に演奏を聞いてもらえるところです。通りかかった人が足を止めてくれるのがうれしいです」

_さきほど演奏されていた「悲愴」はアレンジがされていましたね
「→Pia-no-jaC←というピアノとカホンのデュオの曲です。彼らが編曲した曲がかっこよくて好きで、よく演奏します」

クリスマスソングメドレーを演奏していた冨永隆治さん。

_衣装もとてもステキですが、ふだんはなにをしているのですか?
「サポートミュージシャンをしています。ライブなどもやっていますが、ストリートピアノを一人で弾くのは初めてで、ライブとは違った緊張感がありました」

_最初はちょっとたどたどしく演奏を始められていました。
「聴いている人たちを驚かせるような演出をしてみました(笑)。まちや天気に合わせて曲を選ぶなど、もっと演奏も楽しみたいですね」

_観客の方ともお話されていましたね。
「ふだんから応援してくださっている人で、SNSで今日ここでみなさんへのクリスマスプレゼントを演奏しますと告知していたんです」

_また弾いてみようと思いましたか?
「ドキドキしますが、まちにピアノがあるってすてきですよね。勇気を出して、また演奏してみたいと思います」

フクオカストリートピアノ
場所 ソラリアプラザ1F北側(インフォメーション前)
利用時間 10:00〜20:00
※ソラリアプラザ休館日は利用できません

日本全国のストリートピアノの設置場所が掲載されたサイト