【福岡音楽事始】第6回~「エルヴィス・コステロ with ニック・ロウ福岡公演(1987年)」~

主に70年代後半から80年代にかけて、福岡の洋楽ロック・ファンはアメリカよりもブリティッシュ勢を好む人が多かった。それは、惜しまれながら昨年閉店したジュークレコード、そしてザ・モッズやザ・ロッカーズといった地元ビート・バンドの影響もあると思う。ジュークは”HOME OF THE BEAT”を標榜していたし。今回は、エルヴィス・コステロが盟友ニック・ロウを引き連れて行ったコンサートを紹介したい。

ELVIS COSTELLO & THE CONFEDERATES
Special Guest – NICK LOWE
1987年11月27日(金)
福岡サンパレス

定刻の18時30分にニック・ロウが現れ、いきなりヒット曲 “Cruel To Be Kind”を歌い出した。会場は大盛り上がり。30分ほどのステージを終えコステロの登場。この年にアルバム”King Of America”を発表し、アメリカン・ルーツ・ミュージックに傾倒していた時期。バックを固めるメンバーもジム・ケルトナーを始めベテランばかり。渋い演奏を繰り広げた。

途中でニック・ロウを呼び数曲一緒に演奏する。中でも名曲 “(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love And Understanding”のデュエットは素晴らしかった。「平和と愛と理解のどこがそんなにおかしいんだい?」という歌詞は永遠に歌い継がれるだろう。

パンクやニュー・ウェーヴといったムーブメントから10年経ち、ロック・シーンもアーティストも変化し続け、リスナーも大人になっていた。80年代後半は「〇〇ロック」のようなネーミングで括れないほど、多様な広がりを見せていた。

今でもよく覚えている場面がある。数回のアンコールがあり、コステロは腕時計を指さしながら「そろそろ片付けて出て行かなければならないんだけど、最後にもう1曲」とか言って極上のバラードで締めた。なんだか、とても良い人に思えた。

資料提供:中川 博之氏

記事提供者:元永 直人
福岡市在住。1976年ベイ・シティ・ローラーズの初来日公演を体験しライヴの虜に。以来通った洋邦のライヴは数知れず。また、放送局勤務時代に音楽番組やイベント(MUSIC CITY TENJIN、アジア太平洋フェスティバル、福岡県アジア若者文化交流事業等)に携わる。