もっと身近に…多彩なオーケストラの魅力を
“コロナ禍で、演奏の機会を奪われた多くの音楽家、そして鑑賞の機会を奪われた多くの音楽ファンが、音楽は不要不急なのかと自問したのではないでしょうか。いつも我々に寄り添い、辛い時には癒し、時には勇気をも与えてくれる音楽が、日々の営みにいかに大事であるか、その必要性を再認識された方はたくさんいらっしゃると思います。しかしながら「クラシック音楽」となると、堅苦しくてとっつきにくい、敷居が高い等々のイメージで苦手意識を感じている方もいらっしゃいます。とはいえ少し気にかけてみると、あらゆる場面でのBGMとして、テレビCM、携帯電話の着信音等にクラシック音楽の作品は効果的に用いられていて、わたしたちの身近に溢れているものです。
どなたでもご存知のクラシック音楽の作曲家たち–気難しい雰囲気で異性にも興味なさそうと思われがちな“ベートーヴェン”は実は恋多き男、洗練された作品を数多く遺した“モーツァルト”は下ネタが大好きな上に大のいたずら好き・・・世間の流行に敏感なモテモテのエンターテイナー“ヘンデル”や、2度の結婚で20人の子供をもうけたビッグダディー“J.S.バッハ”等々・・・小中学校の音楽室に飾られた肖像画でみた近寄りがたい偉人たちのイメージがつきまとう彼らも人間味溢れる生身の人間で、それぞれ波乱万丈の人生を送りました。作曲家たちが湧き上がる想像力をもって渾身の力で創作した作品は、世代を超えて私たちの感性を揺さぶります。
ピアノ等のソロ、少人数の演奏家たちによる室内楽、総合芸術といわれるオペラ、歌曲等、クラシック音楽の形態は多種多様です。とりわけオーケストラが奏でる音楽は実に多彩です。ヴァイオリン、フルート、トランペットなど弦・管・打楽器の様々な音色が重なり合って生まれる豊潤なサウンドがコンサートホールに満ちた瞬間に味わう得も言われぬ感動は、正に心のビタミン剤になりましょう。社会の縮図とも比喩されるオーケストラ、個性溢れる演奏家たちが一堂に会し一心不乱に奏でる音世界は壮大かつ繊細で、そこにはいつもドラマがあります。オーケストラの計り知れない魅力を皆様と共有し、この福岡で、クラシック音楽を一緒に楽しんでいきたい。わが街のオーケストラ「九州交響楽団」がその一助になれますことを心から願ってやみません。その思いでこのコラムの筆を進めていきたいと思います。
記事提供者:深澤 功
九州交響楽団 音楽主幹
福岡音楽都市協議会 企画運営委員