【インタビュー】福岡のライブハウス事情や音楽シーンについて(前編)

※左から深町健二郎さん、首藤宏昭さん、南原尚幸さん

福岡のライブハウス「Queblick(キューブリック)」と「OP’s(オーピーズ)」を運営されている株式会社PROJECT FAMIRYの首藤さまに福岡のライブハウス事情や音楽シーンについて福岡音楽都市協議会のメンバーでもある六本松 蔦屋書店の南原さまと一緒にインタビューしました。

ライブハウスを始めたきっかけ

深町氏
深町氏

今日はお時間いただきありがとうございます。未だ新型コロナウイルス収束の兆しが見えないところですが、ライブハウスの運営は依然として厳しいんじゃないでしょうか?

首藤氏
首藤氏

こちらこそありがとうございます。東京や大阪など県外から来るアーティスト達にはライブ前に抗原検査などしていただいてるんですけど、キャンセルになることもありますね。また公演が飛んじゃうのかなという心配をいつもしています。

深町氏
深町氏

今後コロナが爆発的に増える可能性もないことはないですしね。

首藤氏
首藤氏

弊社が運営しているQueblickは今年の2月が9周年で2月中は毎日LIVEするというイベントを開催するんですが、振り替えもきかないし、中止にしようかという話は出ましたね。

深町氏
深町氏

本音はもううんざりみたいなところもあるでしょ?

首藤氏
首藤氏

もううんざりというのもあるんですけど、結局過去にとらわれても前に進めないので、今の環境でできることしかやらないというのは決めています。国からの要請も、申し訳ないですけど無理なときは無視するしかなくなってくるじゃないですか。ただ、それは避けたいので、そうならないためにはどうすればいいのかというのを考えて、前を向いてポジティブに動いてはいます。

深町氏
深町氏

こちらも無視したくてするわけじゃないから、もちろんそうですよね。

首藤氏
首藤氏

落ち着いたら「コロナ前に戻る」という表現はあまり使いたくなくて。戻ることはないと思っていますし、この状況だからこそ配信等いろいろ新しいことにチャレンジできたわけで、もちろん賛否両論あると思いますが、それでも新しいことをやっていかないと、そこに答えがないからですね。まずはやってみて判別していくトライ&エラーを重ねている感じです。正直ライブハウスや飲食店もみんなきついと思うんです。世の中のニュースでライブハウス等の音楽業界が槍玉にあげられたのは憤りを感じますけど、やっぱりそういう状況になったのはしょうがないことだとは思います。

南原氏
南原氏

首藤さんご出身は?

首藤氏
首藤氏

別府生まれです。親の転勤とかで中学・高校の時は中津市でした。

南原氏
南原氏

あの唐揚げは中津の唐揚げですか?

首藤氏
首藤氏

そうです。

南原氏
南原氏

「夢壱門」ってドラムの横にあった居酒屋さんがあって、そこの唐揚げが僕は一番おいしいなと思っていて、それもバンドの打ち上げのために作った居酒屋なんですよね。

深町氏
深町氏

大分といえば唐揚げみたいな感じがありますよね。

南原氏
南原氏

ほんとにおいしかったんですよねぇ。

首藤氏
首藤氏

南原さんずっと言ってくれてますよね。1回ツタヤさんのほうでもちょっと出さないかという話が出たりとかして。

深町氏
深町氏

食べてみたいです。

首藤氏
首藤氏

レシピはたぶんどこかにあると思いますよ(笑)。コロナの前の年に閉店させていただいたんですが。

深町氏
深町氏

幻になったんですね。

首藤氏
首藤氏

そうです。またいつかはやりたいと思いますね。Twitterでわけのわからないこととかもよくやっていたので「肉の日だから29円唐揚げ食べ放題」とか。そういうことばかりやっていました(笑)

南原氏
南原氏

首藤さんとはあまりこういう話をしたことがないんですけど、この仕事をするきっかけというか、いつから始まったのかとか、線引きが難しいとは思うんですけど。

首藤氏
首藤氏

1999年、大学生の頃です。バイクがずっと好きで乗っていたんですけど、ぶつけたことがあったんですね。そのときに周りのDJをやっている仲間がいっぱいいたので、一緒にイベントをやろうよという話になって。人混みが基本的に嫌いなのではじめは断ってたんですけど、ちょうどバイクをぶつけた時だったので「もし頑張ってチケット売れたら利益出るからお前の修理代にしていいよ」って、「じゃあやる」と言ったのが本当のきっかけなんです(笑)ロック界隈の音楽は高校生の頃から好きだったので、イベントのジャンル的にも別に嫌ではなかったですね。それからずっとイベントを続けて、2002年に大学を卒業して実は1回就職しています。

深町氏
深町氏

大学は福岡ですか?

首藤氏
首藤氏

大学は九州産業大学です。そこで土木科にいたので、そのまま就職して、鹿児島の川内の新幹線に行って、それこそ西区の都市高速も行ったり、板付のほうも行ったりしてたんです。

深町氏
深町氏

インフラ的な仕事?

首藤氏
首藤氏

そうです。CADを引いたり、コンクリートを流し込んだりして。でもイベントって先のスケジュールがある程度決まってるじゃないですか。会社の人には「結婚式が決まってて」とか言ったら、会社の人が良い人すぎちゃって「結婚式なら行ってこい」って言ってくれていたので、それに対してだんだん心苦しさが出て。。その頃にはイベントチーム自体は解散したんですけど、当初のスタッフたちがもう1回しましょうと自分に訴えてきて。もうこれを人生の仕事にしていこうと思い、すぐに仕事を辞めて、会社にすると決心したのは23歳のときです。

首藤氏
首藤氏

周りからは大反対を食らいましたけどね(笑)「そんなに甘くないよ」って。逆にそう言われたことがきっかけで「負けたくない」「絶対どうにか形にしてやる」ってなりましたね。学生時代にいろんな経験をさせてもらって、Zeppさんに飛び込みで「貸してください」って借りて、大赤字をこいたこともあります。でもその赤字があったので今があるなというのはつくづく思いますね。

深町氏
深町氏

バンドはやってなかったんですか?

首藤氏
首藤氏

それが一切したことないんです。高校二年生の時に「バンドやろうぜ」って盛り上がって、アンプ付きの1万9800円、2万9800円とかのギターがあるじゃないですか、欲しい色がなかったんですけど、自分で削って塗ればいいやと思って買ったんです。紙やすりというか普通のやすりでずっと削ってて、それが全然取れないんですよね、やっぱり。

南原氏
南原氏

だいぶ分厚いですからね(笑)

首藤氏
首藤氏

そうそう。そんなこともわかっていなかったので、それを解体してそのまま置いていたら親に捨てられて、バンドをするきっかけもなく終わったって感じです。

南原氏
南原氏

好きな色があったら、今頃やってるかもしれないですね。

首藤氏
首藤氏

可能性はあったかもしれないですね。

深町氏
深町氏

音楽についてはそんなにどっぷり好きって感じでもないんですか?

首藤氏
首藤氏

性格的にどっぷりはまり込むというのがあまりないんですよ。たとえば極端に言うと「芸能人で誰が好きなんですか?」とか聞かれても、わからないから答えられないです。でもロックバンド、J-POPとかは好きだったので、いろんなCD集めたりとかはずっとしていましたよ。

首藤氏
首藤氏

DJに関しては遊びでしかやったことないですけど、レコードとか見た目が好きで、よく買いに行ってました。バンドはやりたいとは思うんですけど、絶対こういうの苦手なんで。人前に出るとかほんと無理なんで。たぶんやるとしてもベロベロで酔っ払ってみたいな(笑)。無理ですね、たぶん。

深町氏
深町氏

ライブハウスの経営なんて、本当に好きじゃないとできない世界というイメージはありますよね。ビジネス的に儲かるかもしれないとかで始める人はあまりいない気がします。

特別対談
首藤氏
首藤氏

そうですね。リスクもでかいですし。ライブハウスの経営に関して言うと、今まで出会った仲間たちと一緒になにかしたいって思った時に、自分が想像しているやり方とかが、やっぱり自分の箱じゃないとできないなというのもありました。東京からアーティストを呼ぶにも交通費が掛かりますし、福岡だけの興行収入やチケットの売上とかだけで賄うというのはかなり厳しいことです。

首藤氏
首藤氏

だけど自分の会場を持っていたら、費用が浮くと言ったらあれですが、自由に調整できます。あとは自分のライブハウスを経営してみて、これからどうなっていくのかを見てみたいというのもあって。地元バンドのホームと言われる場所が全国にいっぱいある中で、福岡って意外となかったりするんです。アーティストはいっぱいいるんですけどね。だからそういう場所をどうにか作りたいなというのが今でもありますね。

20年前の福岡の音楽シーン

南原氏
南原氏

20年ぐらい前の福岡の音楽シーンってどんな感じだったんですか?

首藤氏
首藤氏

親不孝エリアに関して言うと、歩けば絶対誰かにぶつかるぐらい人が多かったですし、いろんなジャンルのいろんな服装のいろんなカルチャーを持っている人たちがいっぱい集まっていましたね。最初は大分から出てきたばっかりの時なので、親不孝エリアに入ること自体が怖かったですね。

首藤氏
首藤氏

だけど有名なマリアストリートがあったときは、今でもあの雰囲気は良かったなって思います。昔は自然に「とりあえず行ってみるか」という感じでみんな親不孝を歩いたり、西通りに行ったりとかしてました。親不孝自体が今後どうなっていくのかもわからないですけど、やっぱり若い子たちが離れてる。用事があるときに来てるという状態になっていると思います。

首藤氏
首藤氏

昔だとあらゆる音楽情報は現地を歩いて目に入っていたのが、今は全員が全員そうではないとは思うんですけど、SNSから情報を取って目的地にしか行かなくなっている感じがします。親不孝のシーンもそうですけど、福岡の音楽シーンとかもどう広げていくのかは課題を感じますね。自分はSNSとかに疎いので、スタッフからいろいろ勉強させてもらっています。

深町氏
深町氏

もし今首藤さんが学生でこれからなにかやろうというときに、このコロナ禍だったらなかなか足を踏み出せないですよね。

首藤氏
首藤氏

そうですね。ちょっとしたことがきっかけで、なにかに興味を持って開花されることとかあるじゃないですか。映画1本見たり、ライブ1回行ったりとかでも。そういうことがこのコロナで感じられないというか。そういう点で言うと、かわいそうとは言いたくないんですけど、今の学生は分母を狭くされているというか、もうちょっと視野を広げてあげられることができれば、音楽に限らず他のところでも開花する部分が絶対あると思うんです。

首藤氏
首藤氏

旅行に行って「ここにいつか住んでみたい」みたいな場所とかも出てくるじゃないですか。ライブハウスに初めて行ってみて「楽しい!」って感じてもらえてライブにハマっていくのももちろんあると思いますし。きっかけがないとなかなかやっぱり踏み込まないし、そういうきっかけがあることにすら気づかないまま学生生活が終わってしまっているというのがあると思います。

ライブハウス同士の連携でコロナを乗り越える

南原氏
南原氏

僕は2014年に初めて首藤さんにお会いしたんですけど、LD&Kが開催する新人発掘オーディションの大名コーリングに参加させてもらって、その翌年がTENJIN ONTAQのはじめての開催で、そこでも当時の担当者だったタワーレコードの三村さん、スペースシャワーの笠井さん、ラブエフエムの波多江さんたちと一緒に実行委員会という形で携わらせていただきました。

南原氏
南原氏

音楽イベントに関わることになったのはこれらがきっかけで、バンドのブッキングとかもほんとすごくて120アーティストぐらい呼んでいたので、全然意味がわからなかったです(笑)。とりあえず呼ばれて参加したらすごい大変だったことを覚えています。

深町氏
深町氏

それを首藤さんがしっかりと仕切っていた感じなんですね。

首藤氏
首藤氏

そうですね。最初のきっかけは天神で無料の音楽イベントを楽しめるミュージックシティ天神からなんですよ。ライブハウスを使ったイベントを僕が担当することになった経緯があります。それからちょっとタイミングがなくなって、いつかまたそういうのを自分たちでやりたいと思っていたときに、ちょうど別件で当時スペースシャワーの笠井さんとお会いしたときに「僕たちもそういうのを考えていて一緒にできないですか?」みたいな話になって、僕たちも興行でするつもりはなかったので「じゃあみんなでできたら楽しいですよね」ってなって、皆さんにご紹介していただいたり、つながりもあったりして実行委員会という形で2015年にTENJIN ONTAQを開催することになりました。

深町氏
深町氏

南原さんその時に何か印象に残ったエピソードとかありますか?

南原氏
南原氏

僕はその時初めてブッキングをすることになったんですけど、ボヘミアンズとキングブラザーズに連絡したらどっちもタイミングが合わずダメだったんです。なので、よくそんな120組もブッキングできるなって思っていたのと、ライブハウスは天神の8会場ぐらいでやっていたので、ライブハウス同士って仲良いんだってことをその時初めて知りましたね。やっぱりそこで首藤さんが音頭を取ってライブハウスの店長とかオーナーの方を巻き込んでいく力は本当にすごいと思います。僕の勝手なイメージだとライブハウス同士ってすごいライバルな感じがするので。

深町氏
深町氏

たしかに。今でもそういうことがないわけじゃないと思いますし。

首藤氏
首藤氏

もちろんライバルというのは少なからずはあると思うんですけど、それぞれがちゃんと個性を持ってやっていてお互い尊重できる部分があるので、全然仲も良いですし、コロナ禍になってもライブハウスの店長たちが集まって、これからどうしていくのかというミーティングとかもやっています。LINEグループを作って「うちはこんな対策します」とかを店長同士で連絡取り合っているので、情報共有とかそういう点に関しては本当にみんな協力的にやっていますし、7月に僕の新しい店舗を出したときも、いろんな店長さんが顔出しに来てくれましたし、そういう点ではフラットにポップに楽しくやっています。

南原氏
南原氏

最初からそんな感じだったんですか?

首藤氏
首藤氏

そうですね。もともと僕がライブハウスを持っていなくて、いろんな会場を借りていたので、借りる側としての付き合いがあったのもでかかったのかもしれないですね。今でも自社だけではなく他の会場さんも借りて、レンタルで企画とかやってますので、そういうつながりもあるおかげかもしれないです。

南原氏
南原氏

そう言われれば確かに福岡はそういう感じで、僕もタワーレコードの三村さんとかもうバチバチにライバルですけど(笑)確かに一緒にイベントで出店させてもらったりとかしてました。これキャンセル出たけん余ってるよって当時僕が欲しかった「毛皮のマリーズ」のレコードの情報を教えてくれたりしました(笑)

首藤氏
首藤氏

それここで絶対書いたらダメですよ。(笑)

南原氏
南原氏

確かにそういうのも福岡らしさかもしれないですね。

首藤氏
首藤氏

確かにそんな気はしますね。

深町氏
深町氏

ほどよい緩さというかね、距離感がね。

南原氏
南原氏

他の県とかはわからないですよね。東京とかバチバチやってそうなイメージはありますけど。

首藤氏
首藤氏

そういう点では「この日イベントあっててうち空いてないんですよ、だから首藤さんのところ紹介していいですか?」って、他の箱から紹介してくれたこともありますし、逆を言えば「ツアーバンドが福岡に来たいみたいなんですけど、うち埋まってるんでそちら空いてないですか?受けてもらえませんか?」というコミュニケーションとかも取っているので、良い関係性だと個人的には思っていますね。

深町氏
深町氏

むしろ連携のメリットしかない話ですよね。

首藤氏
首藤氏

そうですね。なのでコロナになったときの人数制限等もどこかが暴走するのをやめて、ちゃんとみんなでやりましょうという話もしていました。どこかのライブハウスがルールを破ると、良い意味のそのつながりがあるだけにみんなから受ける印象も良くないと思いますし。ドリンク代を500円から600円に上げることが全国の主流になったときも、もちろん上げていないところもあるんですけど、一緒のタイミングで値段を上げようとか。これは九州でまとめてやりました。

深町氏
深町氏

首藤さんが音頭を取って?

首藤氏
首藤氏

音頭を取ってというかきっかけを作りました。店長同士の中で話し合うきっかけだけ作って、どうするかは個々の自由ではあるんですけど。お客さんに対する認知も踏まえないといけないので、いろんなとこで「なんだ、ドリンク代上げたんだ」とかSNS等で違う広がり方をすると、やっぱり懸念する部分もあると思います。

首藤氏
首藤氏

なのでライブハウスに声かけたら、みんなからは「どうしようか悩んでいたからいいきっかけになった」みたいに言ってくれました。このような連絡会みたいなものが九州だけでなく西日本までにも広がっています。西日本だけだとLINEグループで80人ぐらい入っていて、ライブハウス飲み会みたいなのをコロナ前は毎年やっていましたよ。店長、オーナーさん、ブッキングマネージャー等集まって、だいたい100人ぐらいでの大宴会が行われていました。最終的に誰が誰だか覚えられないんですけどね(笑)

南原氏
南原氏

確かに西日本や九州中のライブハウスのオーナーさんが集まって、ワイワイやってるってすごいことですよね。

首藤氏
首藤氏

横の繋がりは広がりやすいと思いますが、上の方とは中々繋がらないので貴重ですね。正直僕も地元が福岡だったらいろんな方と知り合うのが早かったのかもしれないですけど、こっちに出てきて、どうやったら上の方と接点を持てるのかとか行動の仕方がまずわからないというのが若いときでした。

首藤氏
首藤氏

その時に北九州のライブハウスのオーナーの方が主催でやっていた鍋会に運よく参加することになって、音楽問わず、様々な業界の方と名刺交換して、そこでつながった方とは今でもお仕事させていただいています。そのオーナーがもう次世代に引き継ぐと言って、今は北九州の「小倉WOW」の店長がそういう会を開いてくれています。そこでも多くの人が集まって、若い子も来やすくなって、いろんなつながりができてきて良い会だったんですけど、コロナが長引いて今年もどうなっていくのか。。

首藤氏
首藤氏

個人で独立して会社を作ってる子たちも増えてきたので、そこでいろんな仕事が入ってくるようなことができれば、若い子たちも楽しくなるだろうなというのはすごく感じています。なかなかこのご時世なので集まることは自粛していますが。

仕事は若い世代に託すことで新しい感性が生まれ、成長にもつながる

特別対談
南原氏
南原氏

僕のイメージはマネジメントじゃないですけど、任せるのがすごく大胆ですよね。TENJIN ONTAQも首藤さんが仕切っているわけではなく、若いメンバーに最初から任せてやっていますよね。

首藤氏
首藤氏

そうですね。入社1年目で全部任せました。

南原氏
南原氏

パワハラに近いかもしれない(笑)

首藤氏
首藤氏

今で言うとそうかもしれないです(笑)

南原氏
南原氏

でもちゃんとしっかりやっていて、またそれが次の世代に引き継がれていくのがすごいと思います。

首藤氏
首藤氏

最近入社した子に今年は全部やり取りを任せてるんですけど、誘うバンドとか事務所の方にも「新しく入社した子が窓口になります。何かあったら自分が責任とりますので。」と伝えたうえでやらせています。自分が前に出るよりも、若い世代に託した方が若い感性ならではのおもしろいイベントが組めますし、社員の成長にもつながります。若い頃の僕が先輩に対してこうしてほしいと思っていたことが、たぶん今の若い子にも僕に対してあると思うので、それをどれだけ柔軟に対応するか、夢を叶えるために支えてあげられるかというのを常に考えてますね。

深町氏
深町氏

めちゃくちゃ理想的な上司ですよ。リーダーシップというか。だって責任はとるけど口は出さないというかね。

首藤氏
首藤氏

ちょっとは出してるかもしれません。(笑)ブッキングに関して言うとスタッフに自分から誘ってみてと指示をしたら「どういうふうに誘うんですか?」とか「どういうふうに決めてるんですか?」と聞かれるので、口で教えるだけじゃなくて実際の行動でも見せてます。

南原氏
南原氏

そして皆さんものすごく礼儀正しいですよね。

深町氏
深町氏

そういうところも教育されるんですか?

首藤氏
首藤氏

挨拶とかは元気よくじゃないですけど徹底しています。初めが良くても最後が悪かったらやっぱり気分悪くなるじゃないですか。ライブハウスでも入るときは良い雰囲気だったのに、帰るときなんか良くなかったら、今日せっかく楽しい日が違う感じで終わったりもするじゃないですか。だからそういうのも徹底させていますね。

首藤氏
首藤氏

あくまでもお客さんがいてくれて、発注者、ニーズがあっての仕事なので。自分たちだけじゃ、ライブハウスを持っていてもやってくれるアーティストがいなければ成り立たないですし、アーティストがいてもお客さんが来てくれなければ、やっぱりこれも成り立たないものなので、そういう意味でこの三角形みたいなファミリーのマークができたんです。

深町氏
深町氏

「トライアングル」のイベントもその理由ですか?

首藤氏
首藤氏

そういうことです。ローディーさんや音響さんなどいろんな職種の仕事がありますが、正直九州は仕事が少なくて、みんな東京とかに出ていくんですけど、それをどうにか九州に留めさせたいですね。九州をフィールドに自分で仕事にしていける環境を作りたいと思っています。そういう仕事を持っているわけでもないし、知識を持っているわけでもないので、結局教えることはできないんでしょうけど、きっかけを作りたいなみたいなことは考えています。

南原氏
南原氏

首藤さんの会社はボトムアップ的な風土がありますよね。

首藤氏
首藤氏

昔は勤務時間について自由出社、自由退社だったんです。ちゃんと決めた時間帯だけは連絡取れるようにしてたんです。この業界ってお付き合いで夜遅くまで飲んで次の日朝行くのはきついとかあるじゃないですか。自分が経験してわかっているので、それを若い子らに押しつけてというのは嫌だなと。でもあるタイミングで社員のほうから定時にしたいという提案が来たんです。社員の数が増えてきたことで、誰が何してるのかを把握するのが大変になってきて、その確認の時間が無駄だからというのがあって。こうやって言ってくれるのはありがたいですね。

深町氏
深町氏

社員は何人ぐらいいるんですか?

首藤氏
首藤氏

20人ぐらいです。

深町氏
深町氏

まあまあ多いほうじゃないですか?さらにバイトとか入れたら50人ぐらいいくでしょ。

首藤氏
首藤氏

ここで言う話じゃないんですけど、僕音楽とは全然違う仕事もしてるんですよ。運送業とかもしてるんです。なので社長の肩書きがもう1つあるって感じです。

深町氏
深町氏

なるほど。ということはグループ企業みたいな感じですね。

首藤氏
首藤氏

そうですね。面接について、基本的にはライブハウスも飲食店も店長がすると決めています。社長だったら自分の権限で好きに決められるじゃないですか。それよりも現場の人たちがこの人と一緒に働きたいと思って採用を決めてもらうほうが絶対にうまくいくと思うんです。コロナになって入ったアルバイトさんでお会いしたことない方もいるので、自分のライブハウスに入ろうとすると受付で止められたりもあるんですよ(笑)

深町氏
深町氏

どなたですかって(笑)

首藤氏
首藤氏

「すいませんドリンク代」とか(笑)でも逆にそれが良くて。ちゃんとしてるのが確認できますよね。関門というか、パスもつけてないから止める。当たり前じゃないですか。普通にスルーしたら「どうなってるの?」って逆に注意もできるので。そういう点では自分でそれを実感できるのですごくおもしろいです。

(後編へ続く)